コロナ復興とジェンダー、日本にできること(2021年2月22日掲載)

2週間前 : 2021.02.22

武田

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ジャーナリスト、昭和女子大学研究員、東京大学情報学環客員研究員
治部 れんげ


昨年の今頃は、世界がこのように変わるとは思っていませんでした。仕事はほぼオンラインに変わり、講演はオンラインミーティングによる配信か録画になりました。ただし、私の生活は、親しい友人と食事ができなくなったことを除き、あまり変わっていません。もともとコロナ前から、週3日は在宅で執筆などをして、週2回ほど都心に出て打ち合わせや会議をしてきました。仕事仲間にも似た働き方の人が多く、コロナ後も仕事量や収入に大きな変化がないといいます。

ただしそれは、ごく一部の話で、社会全体を見渡すと、コロナは女性に大きなインパクトを与えています。2020年12月25日に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」は 、次のように記しています。
「新型コロナウイルス感染症の拡大は、女性と男性に対して異なった社会的・経済的 影響をもたらしている。外出自粛や休業等による生活不安・ストレスからの配偶者等 からの暴力や性暴力の増加・深刻化が懸念されている。また、非正規雇用労働者、宿泊、飲食サービス業等への影響が大きいことから、女性の雇用、所得に特に影響が強く現れており、経済的困難に陥るひとり親家庭の増加も危惧される。さらに、子育てや介護等の負担増加も懸念されている。こうした状況を踏まえ、平時のみならず、非常時・緊急時にも機能するセーフティネットの整備を図る必要がある。」

もともと働く女性には非正規雇用が多いことは知られています。令和2年11月10日公表の労働力調査によれば、同年7~9月の役員を除く雇用者は男性2995万人、女性2606万人で、そのうち非正規雇用は男性660万人、女性1404万人となってい ます。

中でも女性就労者が多い宿泊や飲食業は、コロナ対策で旅行や出張の需要が激減し、営業時間短縮の要請が政府から出る中で、大きなダメージを受けました。加えて、家事育児介護などのケアワークの多くを女性が担っているため、在宅勤務や休校の間は、家事負担が増えた、という声も聞きます。

積水ハウス住生活研究所の調べによると、在宅時間が増えたことでストレスが増えた人の割合は男性51.3%が女性70%と女性の方が高くなっています。その理由を調べると、家事量の増加を上げた人が男性13.1%に対し女性39.1%と差があります 。

このような傾向は日本だけではなく、世界共通です。
2020年10月12日・13日にベトナム・ハノイで開かれたアジア欧州会合ハイレベル対話に私は東京からオンライン参加しました。テーマは「COVID-19パンデミック下における女性の経済的エンパワーメントの促進」です。

アジア欧州会合は アジアと欧州の協力を強化することを目的に、政治、経済、社会・文化を主な柱とする活動を行っており、アジア側は日本を含む21カ国1機関(ASEAN事務局)、欧州側は30カ国と1機関(欧州連合)によって構成されています。

ハノイの会議には、世界銀行、OECD、UNDP等の国際機関とベトナム、カンボジア、インドネシア、ノルウェイ、日本、デンマーク、イタリア、ロシアからの参加者が登壇してスピーチや研究データ・事例共有をしました。時節柄、リアルに集まった人とオンライン参加のハイブリッドで、私は東京からオンライン参加して日本におけるコロナ対応とジェンダーの課題、ちょうど策定中だった第5次男女共同参画基本計画の議論において、市民社会や若い世代の声を取り入れた動きを話しました。

ベトナム・ハノイで開催されたアジア欧州会合オンライン参加した人たち。(Photo is provided by the Ministry of Foreign Affairs of Viet Nam/写真提供:ベトナム外務省)

会議冒頭であいさつをしたベトナムのトー・アイン・ズン外務次官は、医療、経済、安全や社会的保護といった各分野において、コロナは女性により大きな影響を与えている、と問題提起をしました。大きな理由として、女性はケア責任を負っており、収入と教育の機会が少なく、医療にアクセスしにくく、もともと男女間にデジタルや収入の格差があるため、と言います。

また、カンボジア王国のソック・シパナ政府顧問は、パンデミックの前から女性が大きな社会的リスクにさらされていたことに言及しました。カンボジアでの女性労働者は、製造業、繊維業、小売業、観光業、サービス業で働く人が多く、コロナの影響を大きく受けており、これら産業で65万人以上の女性が働いているそうです。

国により産業構造の違いはありますが、共有された課題は、日本にも通じます。こうした国際会議で問題意識や解決策の交換をすると、日本の男女平等政策や、G20など多国間協議で議論されてきたジェンダー課題と方向性が一致していることがよく分かるでしょう。

平時からある男女格差がパンデミックで露わになった現在、より良い復興を目指すためにどうしたらいいのか――。様々な議論の中で最も心に残ったのは、デンマークのキーラ・アペル平等大臣付チーフコンサルタントの話でした。アペル氏は男性と若者を包摂することの重要性を説き、男性のケア労働への積極参加を提案しました。この問題意識は私も以前から共有していました。また、デンマークでは男女平等政策を議論する会議に「若者のパネル」を置いていると聞き、日本の政策議論でも今後、取り入れたらいいと思いました。

ベトナム・ハノイの会場に集まりアジア欧州会合に参加した人々。男性の姿も多いことに注目。ジェンダー平等について語れることは、グローバルなリーダーなら当然になっています。(Photo is provided by the Ministry of Foreign Affairs of Viet Nam/写真提供:ベトナム外務省)

コロナにより、以前からあった性別や経済階層に基づく格差が露わになりました。世界共通の課題に対処し、その知見を他の国々と共有していくことが日本には求められているのです。

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