【東北ブロック】
私たち研究者夫婦の子育て(2020年10月9日掲載)

3週間前 : 2020.10.09

武田

プロフィール写真

山形大学学術研究院 助教 河合 寿子


私たち夫婦は共に研究者であり、2012年の入籍当時、私は大阪大学、夫はUniversity of Houstonに所属していました。その後、2014年に第一子出産、2016年に夫と同居開始、2019年に第二子を出産しました。このような背景の中、これまでの研究・育児生活を振り返ってみます。

子供が産まれて世界が変わる
子供が産まれる前は朝から晩(朝方)まで24時間の全てが自分の時間。毎週、光化学系Iを精製する曜日は細胞回収、チラコイド膜精製、カラム精製、密度勾配遠心まで一気に、朝の7時から夜の23時まで。朝9時から次の日の朝まで24時間4℃部屋で結晶を拾ってそのままタンクを持ってSPring-8に向かい測定開始、なんてことも。ところが。赤ん坊が産まれてみると、自分の人生の主役はもはや自分では無く、赤ん坊に!一人でこの子を育てながら研究を続けると腹を括り、娘が生後2ヶ月の時に復帰しました。

全てを背負う覚悟
家事・育児に全責任を負う(家事・育児のコレスポになる)と言うことは、’’今日は食器を洗った’’、’’毎日子供をお風呂に入れている’’ということではありません。PIと技術補佐員の関係を想像していただきたい。’’今日は培養ボトルをあらった’’、’’毎日細胞の植え継ぎをしている’’。これはサポートであり、研究に全責任を負っているわけではないのです。私は出産してはじめて、育児コレスポの大変さを知りました。

図. 10ヶ月乳児との出張に必要だった荷物

図を見ていただきたい。これは、娘(10ヶ月児、アレルギー持ち、既製品離乳食を食べられない)と2人暮らしだった頃に6泊7日の出張に行った時の荷物です。愛知県を出発し、大阪に寄り(二泊)、徳島の蛋白質科学会に参加。ただ、それだけの出張の準備の大変なこと。これは単なる一例ですが、育児の苦労をまるで想像出来ていなかった私自身の過去を振り返り、もしこのコラムを読んでくださる方がいたら、「育児をしていると、いかなる時も想像以上のタスクを背負っている」と思っていただけたら幸いです。そして、男女問わず、研究を続けたい”育児・家事コレスポ”への理解が進みますように。

夫婦そろっての育児(娘2歳から)
夫婦が大事にしていることは何ですか?と聞かれたことがあります。改めて話し合ったことはないですが「子供達を心身ともに健康に育て、将来自立して幸せに生きていけるようサポートすること」という目標を共有していると思っています。また「研究に上下はない。夫婦のどちらかの研究(人生)が優先されることはない」という意識を互いに持っています。互いに育児・家事で時間が限られるため、どちらかが夜や週末に実験がしたいとなれば、相手は家事・育児を引き受けサポートしています。
家事に関しては夫婦で60点を目指しています。夫婦二人とも、研究と育児で精一杯の毎日。家事まで100点を目指したら子供に笑顔で接していられるでしょうか。夫婦で力を合わせて60点、あと20点は外注しよう。という方針です。最近、週に二回、2時間ずつ家政婦さんを頼むことにしました。洗濯・乾燥までは私が頑張る。たたんでタンスにしまうのは任せた。そう思うと気が楽になります。夫は、うちの食事コレスポであり、買い出し、冷蔵庫の管理、調理(朝・晩(+保育園のお弁当))を行っています(離乳食のみ私)。ちょうど息子が自分で食べたい時期なので後片付けも大変そう。これに関しても、明日は家政婦さんが来てくれるから今日は休もう、と思える日があるのは大事だと思う(その他、レトルトパックご飯や離乳食パック、食洗機など頼れるものにはなんでも頼る)。

興味があることを続けられないのは自己責任?〜ライフイベントの負担が女性に偏る社会〜
最近、男性研究者友人と雑談メールしていた時、こんな文がありました。「研究業界が性別に関係なく、興味がある人が自由に参入できる分野になることが望ましいと思います」。同意です。しかし、参入したくても背負うライフイベントが重すぎて研究へのモチベーションが削られていく女性研究者友達を見てきました。実験する時間が減ったこと、公募にアプライしなかったこと、それを、自分で決めたことと言うのは容易い。しかし、もし自分が家事・育児のコレスポでない場合、相手に気軽に「やりたいならばやればいいじゃん」と言っていけないと私は思います。夫婦共にやりたい仕事がある場合は、家事・育児・介護などのライフイベントについて、夫婦は完全に対等の覚悟と責任を持つ、co-コレスポであるべきだと思っています。日本はライフイベント(出産・育児・家事・介護など)の負担が女性に偏る社会でありながら、その実体が可視化されていない。この差が埋まらない限り、”女性”研究者と敢えて括られる現状は変わらないだろうと感じています。

最後に
私が研究に興味をもち、研究を続けることができているのは、女性研究者ロールモデルの母が、自然科学の楽しさを教えてくれる父が、支えてくれる家族がいてくれて、そして、ライフイベントへの理解と研究への情熱を持っている上司に恵まれたからだと思っています。私は現在、女子中高生向け実験をはじめ、多くのアウトリーチ活動に参加させていただいています。たくさんの学生さんに科学の楽しさを体験してもらえたら、そして、女性の研究者は身近にいる存在と自然に感じてもらえたら嬉しいです。 同時に、「研究したいと思う誰もが参入できる世の中」に近づけるためには、男女問わず個々人のライフイベントによるパフォーマンスの低下を社会全体で支える土壌が必要だと考えています。今は、日本全体として、許容量がいっぱいでバッファーがないように感じています。この問題に対して個人として何かできるのだろうか。簡単な解決方法などないのでしょうが、これからも悩んでいく義務があると思っています。自分の子供たちの笑顔を見ていると、すべての子供たちに明るい未来を!と願わずにはいられません。

娘2歳の時
基礎生物学研究所の一般公開にて
息子0歳の時
領域会議で発表を終えての帰り道
(山形-岡山)

企業対象アンケート調査報告書

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