【東北ブロック】
遷移金属触媒反応を基盤とする生物活性化合物の開発研究〜充実した研究環境に感謝〜(2020年10月9日掲載)

2週間前 : 2020.10.09

武田

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東北大学大学院薬学研究科 准教授 有澤 美枝子


私は、遷移金属触媒反応を基盤とする生物活性化合物の開発に関する研究を行なっています。ここでは、周期表で第15-17族に属するイオウ・リン・窒素・酸素・フッ素等のヘテロ元素に着目しています。これらは有機化合物の機能発現に重要な役割を果たし、医薬品や機能性材料として広く利用されています。炭素と水素のみからなる化合物に、ヘテロ元素を適切に配置することによって、高度で精密な生物活性の発現や薬効の調節を行うことができます。特に、イオウ・リン等の第3周期以降の元素は、ソフトな性質を有し様々な酸化状態を取り得ることから、同族第2周期の酸素・窒素とは異なる機能を発現することが期待されます。ここでは、炭素原子とヘテロ元素を結合する有機合成技術とヘテロ元素資源の有効活用技術の開発が不可欠です。しかし、その合成には一般に古典的な方法が用いられており、多段階合成や省エネルギー・資源浪費等の問題があります。

加えて、新しい有機化合物が毎年数十万個以上新たに化学合成されていますが、ほとんどの場合に既存の分子骨格に新しい置換基を結合した化合物であり、本質的に新しい分子骨格の有機化合物は限られます。私は、従来知られていなかった斬新な化学反応を開発することによって、本質的に新規な分子骨格を有する有機ヘテロ元素化合物を合成して、特徴的な現象と機能を開発したいと考えました。この目的のために、有機へテロ元素化合物の合成に不向きとされてきた遷移金属触媒を活用して、これらの新しい環境調和型高効率合成法の開発を行なっています。最近、イオウ・リン等のヘテロ元素を含む2種の複素環と様々なヘテロ原子リンカーを連結する新しい触媒反応を開発しました。新合成法の開発は、これまでにない新規な有機ヘテロ元素化合物群の合成を可能にし、新薬や機能性材料の創生に直結するため重要です。実際に本触媒反応を基に合成した新しい化合物群の中から、特異な活性を有する数種の化合物を見出すことができました。本研究によって、新しい構造の多様な含ヘテロ元素生物活性化合物群を合成して、創薬研究に貢献したいです。

また、資源とエネルギー問題の観点から、過剰なエネルギーを用いない平衡反応の利用・ヘテロ元素単体の直接利用によって、多様な新規有用有機化合物を効率的に生産する理想的な反応系を構築したいと考えています。加えて、本触媒法は水中均一系でタンパク質の化学修飾法に適用できるので、新しい生物活性生体分子の開発や低分子医薬品を結合した抗体薬物複合体の創生を行いたいとも考えています。

私は、東北大学大学院理学研究科にて0を1にかえる新反応開発の重要性を学び、研究が面白くて寝る暇も惜しい感覚をもって実験に取組んだ経験が現在に活きています。また、同大学院薬学研究科では研究教育活動に従事するとともに結婚出産を経験し、研究と育児の両立が重要になりました。一人目を出産した頃、東北大学では女性研究者への支援がスタートし、その年に開園した学内保育園を利用して仕事復帰しました。その後、3児の母となる過程では、本学の多様な男女共同参画推進支援(両立支援・女性リーダー育成支援等)が研究継続ための重要な支えとなりました。

また、薬学研究科では、創薬マインドを持った女性教員で構成される女性機能有機分子創生チーム「ORCHID」を創設し、女性の視点から創薬に関する共同研究を行っています。女性は、多様なライフイベントに応じて研究に取組む時間や成果に波ができますが、自身の研究と並行して創薬共同研究を実施することで、皆で協力して継続的な成果の創出と高いモチベーションを維持できるとよいです。研究継続の一助として、こうした研究ネットワーク形成は重要であると感じています。

子供達の成長過程では、両親の一挙手一投足を正確に繰り返し真似て、やがて三者三様の個性が芽吹く様子に感激しつつ、創造性や独創性は環境因子を基にした緻密な模倣の多様な自己開花であると認識しました。今後の成長と展開に型や歴史(履歴)が重要であることを示します。

これまでに多くの組織・制度・支援に後押しして頂き、沢山の優れた共同研究者に囲まれて、現在の研究生活がある事に感謝致します。特に、研究継続と成果実現の二面から東北大学の適切で多様な支援に感謝致します。加えて、昨年退官されました恩師山口雅彦先生のご理解とご指導に感謝致します。今後も優れた研究成果を創出できるよう自身の研究に邁進したいと思います。

ORCHIDメンバーとともに
(著者は右から3人目)
南極観測船“しらせ”にて。
三男が誕生した年、主人は南極に滞在。

参考)東北大学男女共同参画推進センターHP
http://tumug.tohoku.ac.jp

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